時々はぼんやり考える

ライブの感想など

29歳になったので奥田民生1stアルバム「29」を語る

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本日、29歳になりました。1995年、民生さんがソロ活動を始めて最初のアルバムを発売した年齢です。その名も「29」。29歳だったから29。この安直さ……「民生さんらしい」なんて分かってるふうなことあまり言いたくないけど、特にその理由にビックリはしないのでそういうことなんだろう。民生さんが決めたことならファンはこれから「29」という数字を意識して生きてしまうこと必至なのです。もれなく私も、なので、29歳になって改めてこの名盤と向き合ってみました。あ、最初に申上げておきますと「名盤」です。とりあえずOTのアルバムって全部名盤なんですけどこれはまた格別です。王道のような、変化球のような、掴みどころのないような、心が掴まれっぱなしのような、なべつかみのような、そんな魅力しかないアルバムです。全体的には暗くてゆったりした印象かもしれないけど、とても刺激的です。あとレコーディングミュージシャンがなんかよくわからんけどアメリカの凄い人たちです。スティーヴ・ジョーダンさんなどレジェンドです(雑な紹介)。では、95年4月のROCKIN’ ON JAPANのインタビューを参考にしながらただダラダラと曲の感想を書いていきます。

 

「674」
1stアルバムの第一印象が決まる大事な一曲目。いきなり、これOTの声なのかな?と感じるようなとぼけた歌声と、まがまがしい歌詞が耳に飛び込んで来て引き込まれる。「ああいっそ」の部分の声の重なりに注力して聴くとOTの声に飲み込まれそうになる感覚があじわえます。「だらだらだらけのばかやろ〜」で思わず自分のこと言われてるように感じてビクッと。「だけどムナシさは知ってる」などと歌われると、虚しいという感情もなんだかすてきなことに感じてしまうのです。

「ルート2」
聴けばわかるやつ。音よ。音ですな。文章で説明するのは無粋。どっしりと構えた熱狂しすぎないロックンロ〜ル。ドラムが華だ。ライブのセトリに毎回入れといてほしい曲。いつまで経ってもわたしはこの曲のcoolさに夢中です。インタビューで、この曲を一緒にレコーディングしたミュージシャンについてOTは、「やっぱクールですよ、とにかく。もう何やっても余裕に溢れてるよね。まあ音楽はそうじゃないと」と言ってます。音楽はそうじゃないといけないのです。あ〜〜…かっこいい〜……。歌詞もかっこよくて好き。無茶苦茶にちょろくて申し訳ないんですが歌詞に「おれ」って入ってるだけでかっこいいと感じてしまうかっこいいのハードルが底低な人間です…。かっこいいからしょうがない。「頭の中がらんどう」の「どお〜」の歌い方が、グッとなるポイント。好き。

「ハネムーン」
「あなたが憎くてたまらない」の「に」の力の入り具合に心がざわざわします。独特な雰囲気がむんむんと立ち込める。端的に言って脳内麻薬。これまた歌詞が陰気で耳が釘付けになる。もったり演奏される音がどんどん自分の中に積み上がってきて心地よい重みとなります。「ああ ああ ああ ああ」のところは言わなくても分かるだろうけどたまらないポインツ。耳溶ける。

「息子」
お父さん何周目の人が書いたのか?自分のこどもがいるわけでもない20代のOTが生み出した名曲。軽快なアコギのリズムで始まり壮大な世界が広がってどこにも着地しないまま、歌声が宙に浮いたまま終わるような曲。全編にわたって、歌詞に力を入れていない、言いたい事はない、書くのがめんどくさい、嫌、とまで言っているうえで突き刺さる言葉たちをこれでもかと畳み掛けてくる。「おなかがすいたらすぐ忘れるくせに」の一文がなんとも愛おしいです。

「これは歌だ」
もはや詞を書くことを放棄してるし「(テンポ遅すぎて)なんで止まらないのかな?」「間違えてんじゃねえかっていう一歩手前」とまでOTが言うほどのダラダラ加減。なのに琴線に触れまくりなのはなぜ。実際作詞に煮詰まってたらしく、「バーーッてなったんですよ」とインタビューにもありましたが、バーーッてなってできたにも関わらず、投げやりさも破壊力に変わっている。破壊力すごすぎな曲。こういうときこそ書き手の本質が書かれるのかな?て思ったりするけどやっぱりなんかはぐらかされてる感じがする。夢中です。

「女になりたい」
なんじゃこりゃ?と思っていつのまにか何回も聴いている。またいつもとは違う表情を持ったクセのある歌声。「お前がいないとこっちは普通」がなんかおもしろくてすこ。適当に含みを持たせて「Yeah…」で終わるところもずるい。

愛する人よ」
わたしの好きなOT曲で常に上位です。まずイントロかっこよくてあがる。「簡単簡単ベリーグー」の語感がOTの口からスルスルと出てくるところが心地よい。「昔の夢はいちおうスター」でポコポコ聴こえてくるパーカッション、はい好き。「あんまり上手じゃないマイウェイ」の歌い方、はい好き。「陽がまた昇る」からの優しい光に照らされたようなメロディにグッときて、「とぼけてる顔で実はがんばっている」の歌詞に唸って、「愛する人よ何処へ行く、僕を残して何処へ行く」で哀愁〜〜!てなって、たまらんギターソロが鳴る。流れヤバっ。インタビュアが「この歌詞にあるような人物像が民生くんの作品にはよく出てくるじゃないですか。わりとポツンと居てそれをクールに引いて見てる、みたいな。これは基本的な民生くんの世界観なんですか」と聞いており、それに対してOTが「う〜ん、というか一種の手法でしかないんですけど。」と答えてまして、唸った。うお〜〜〜〜その手法にまんまとハマってるなあ…わたしは…!!!!!

「30才」
モヤがかかっているような景色。遠い記憶のような、妄想のような。ふつうこんな曲アルバムに入れるか?とOTの頭の中の謎さをひしひしと感じる。なにが30才なのかも分からないけど、OTがインタビューで「くだらんところが多い良さ」を語っていたのでこれもなんだかアリになってしまう。OTが生まれて初めてキーボードで作った曲ということで、それだけで価値があるらしいです。

「BEEF」
外国の音楽ステキだ。それを目指して、真似して、自分のものにできてしまうのがOTの才能だと思います。なんとなくできるわけでは絶対ないし努力や試行錯誤の賜物と思いますが、できちゃった風なのが魅力。聴けば分かるやつ。歌声も転がってます。OTがスティーヴ・ジョーダンのドラムに惚れ惚れして浮かれてるのが伝わってきてこちらまで嬉しい。ゴキゲン。ずっとやってほしい。

「愛のために」
1stシングルにしてミリオンセラー。華やかでキャッチーでこれは売れますわ…!曰く、普段だったら何曲に分けるほどのアイデアが詰め込まれているとか。強気なOTは頼もしすぎて眩しくて、わたしは腰砕ける。グッとくる要素が詰め込まれている、まずイントロで血湧き肉躍る感じな。「いちいち道草していこう」の声の重なりもよいし「ワールド オブ ワールド」の高い声だすときの「ワ」がよいし。「陸海空いろんなところからどこでも駆け付けましょう」なんのために?「愛のために」。んぎいいいいいいいいい…かっこよすぎ…………。

「人間」
歌い出しの声がこそばゆい。余計なものは身に纏っていないほんとうの歌という印象です。やっぱり広島って贔屓されてていいなーと思います笑

奥田民生愛のテーマ」
今ではむしろおなじみになってしまったけどアルバムの中で唯一全部のパートをOTが演奏してる曲。「〝愛のテーマ〟ということで片づけようという(笑)」なんて言ってますが、ちょ、片づけられないよ。わたしの心乱されっぱなしだよ。こんな曲名付いてしまったらそれはもうわたしの世界の愛のテーマになるしかないじゃないか〜〜〜〜〜〜うあ〜!!!!!!!!!!!めちゃくちゃに好きです。やっぱり歌うことって愛なんだな、と思います。たみおさんが歌を歌うこと自体が愛なんだなと。そう思うともう、何でも乗り越えられますわたしは。どうかいつまでも歌っていてほしいです。どうかいっしょに歌って。

 

改めて全曲をじっくり聴いてみてやっぱりたみおさんって天才だわ、といつも通りの着地点に行き着いたわけですが、ここまで書いてきてこのアルバムを素晴らしいと感じて愛聴する自分の感性はなんだか誇らしいものに感じてきました(自分なんもやってない)。現代のバンドに詳しくないですが、30近くでこんなかっこいいことしてるミュージシャンいないだろうなあと思います。奥田民生になりたいガールとしては29歳で(もちろんもっとずっとずっと以前の年齢のときから)すでに人間として雲泥の差があるなと改めて実感できましたが、いつまでもたみおさんを心に置いて、目指して進んでいきたいです。と同時に奥田姓がほしいという目標もあるのでどう頑張っていいか分かりませんががんばりたいです。

 

次のツアーで「29」の曲も聴けたらいいなあとちょっと期待してます。